市民政策情報センター(SSJC)発行

放射性スクラップの測定と対策

Anthony Lamastra
佐藤ニナ訳

 

 

 1983年アメリカのニューヨークで初めての放射性スクラップ溶解事故が発覚しました。それ以来、これまでに全米のほぼ95パーセント以上の鉄鋼関係者は、さまざまな形で放射線検出器を設置してきました。1998年までこれらの検出器による線源の発見件数は、すでに2000件を超えています。これは、行政と業界がこの20年の間に放射能防御対策に向けてそれなりの努力をしてきた結果とも言えます。
 金属スクラップの世界的流通に伴い、放射性スクラップによる事故と被害は現在世界中に拡散しています。建前では、どの国にも放射性廃棄物に対する厳しい規制があります。しかし現実には、放射性スクラップは世界中で堂々と流通しています。
 日本でも2000年4月29日、住友金属工業和歌山鉄工所、5月10日神戸製鋼所加古川製鉄所で相次いで放射性スクラップが発見されました。
 これらの放射性スクラップはいったいどこから来たのか? 海外からか? 国内の物か? 追求が出来ないままで処分するのか? 処分費用はだれに出すのか? 責任についてもまったく触れられていません。行政側の対策もまったく見えてこないのです。
 今回は幸いにも、溶解炉に入る前に見つかったので、被害は最小限にとどまりました。しかし線源が溶解された場合、問題はとめどなく拡大し深刻化します。その除汚費用、汚染製品の処分費用、作業員や製品の使用者の被爆問題など、業者や行政がとらなければならない責任と対策は膨大なものになります。
 アメリカの例では、1993年フロリダ製鉄所のセシウム137溶解事故で、処分費用だけで610万ドル(約6.6億円)かかりました。又1992年キーストンワイヤー製鉄所がセシウム137を溶解した事故では、工場内の除汚費用だけで230万ドルかかりました。
 線源をまず見つけることで被害の広がりがとりあえず止められます。線源を発見する唯一の方法は放射線検出器です。
 今回この分野の第一人者である Anthony Lamastra 氏が、日本の鉄鋼関係者の為にこの本を書き下ろしてくれました。日本で初めて明らかにされる本書の内容は、関係する方々の疑問にも充分応えられることでしょう。放射能スクラップの実践的な対策ハンドブックとしても、価値は充分です。放射線についての基礎知識から、放射性物質の測定、検出器の種類と事故の対応まで、詳しく書いてあります。
 鉄鋼関係者だけでなく、環境や廃棄物の問題に関心のあるすべての方々にもおすすめします。

□作者紹介
☆アンソニー・ラマストス Anthony LaMastra
1970
年 米国ミネソタ大学修士過程卒業。保険物理修士
ペンシルベニア州環境部顧問として鉄工所の放射能安全対策の監督を努め、安全対策を進めている。30年の保健物理修士と、15年にわたる放射性金属スクラップの分野で培われた豊富な経験を持つ。米国でも数少ない代表的な専門家の一人。国際的な保健物理学会で論文も多数発表している。現在は鉄鋼、工業関係や大学などで放射線防護対策コンサルタントとして活躍中。
☆佐藤ニナ
台湾の新聞、雑誌などで文筆活動
1992年、台湾海華雑誌文学賞入賞
1982年来日
著書:「総被爆者の時代」(海鳴社 1996
 「総被爆者の時代」書評(週刊「金曜日」掲載)

A5版 188
税込価格2,300円 送料240(3冊以上は無料)
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