市民が提案する
「国営瀬戸海上の森里山公園」のマスター・プラン

 

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 2)愛知県、瀬戸市の行政にたずさわる皆さんへ

 愛知県の財政は、職員の給与をカットせざるを得ないほどの窮状です。累積債務が増え続けていますし、景気が好転しない限り、税収の増加は見込めません。このまま行けば、財政再建団体になるとまで言われています。知事の議会答弁では、新住事業に500億円台のお金がかかると発表されました。道路事業にはいくらかかるのでしょう。万博事業にはどの程度のお金がかかり、愛知県の負担はどのくらいになるのでしょうか。バブル経済時代に乱発した県債の返済は、数年後がピークです。さらに万博等の借金(県債)は県民に大きなツケが回される事業であるのに、未だに資金計画すら発表されないというのは、納税者として納得が行きません。おそらく、万博・新住・道路事業の総計で、数千億円はかかるだろうといわれています。アクセスの悪い山奥に、大規模な住宅地を作るために大きなアクセス道路が必要になり、そのための造成費や道路建設費を巨額にしてしまうのです。

 この国営公園構想は、愛知県の財政をこれ以上悪化させることはありません。都市公園の所管官庁は建設省ですので、国営公園は都市計画施設として、都市計画法によって公園化することになります。現在までに県が買い上げた民有地に既存の県有地を合わせて、総計540haを国(建設省)が買い上げます。これまでに民有地を買収した金額は約124億円といわれますが、それに県有地の買い上げ分を含めると、250億円くらいになるだろうといわれます。建設省にとっては、その気になればいつでも出せるお金です。その分、県財政の負担を軽減します。現在支出している県有地の維持管理に要する費用も軽減されることになります。

 建設省も、時代の要請を受けて、その施策は大きく方向転換しています。これまでの箱物中心の建設行政から、「環境重視」の行政への転換です。まちづくりの行政においても、河川行政においても、道路行政においても、その転換が図られていることは、各地の実例を見れば明らかです。例えば、ダム等の公共事業の見直し、矢作川河口堰の中止の決定、河川法の改正、「清流ルネッサンス」などが挙げられます。今、愛知県が建設省に対してこの構想を提案すれば、建設省にはそれを受けやすい環境が整っています。この構想は決して「絵に描いた餅」ではなく、実現性があるのです。

 この構想が実現すれば、公園の管理運営の費用も、建設省から出ることになります。わたしたちが視察した埼玉県にある「国営武蔵丘陵森林公園」の場合を紹介します。建設省からの整備費は、年々整備していきますし、その内容によって変わります。まったくない年もありますし、大きな施設を作る場合には、最高7億5千万円の整備費が出されています。維持管理費も年々増加して、1998年度では約10億円となっています(それには入園料大人400円の収入も入っています)。資料を入手した国営沖縄記念公園の場合は、海洋博覧会地区と首里地区とに分れています。海洋博覧会地区では、1998年度の場合、維持管理費は約16億4千万円、首里地区では約7千万円です。もちろん公園整備のための施設等整備費もあるのですが、その資料は入手できませんでした。

 海上の森の里山公園構想が実現した場合に、どの程度の整備費と維持管理費が建設省から出るかは分かりませんが、上記の金額が一応の目安になるでしょう。地元の自治体、瀬戸市にとっては、雑木林の伐採・植栽作業や、下草刈りなどの作業、公園の清掃作業などは、その費用で地元雇用の作業員に支払われますので、地元の雇用機会が増えます。場合によっては職員の採用もあるでしょう。また、中規模あるいは小規模の建設工事なども、地元の企業に発注され、そのお金が落ちます。新住事業や道路事業は、大きな土木事業であるため中小企業では手に負えないので、大手ゼネコンが建設することになってしまい、地元に落ちるお金は少ないと思われます。

 また、将来にわたって、下水道と下水処理、水道施設の建設・維持管理、あるいは学校や保育園などの建設・維持管理は瀬戸市の負担です。新住法では、それらの費用は自治体の負担になることが規定されています。どちらが地元瀬戸市の負担が少ないか明らかです。国営公園にした場合には、それらの費用はまったくかかりません。全部、国が持つからです。万博・新住事業・道路事業よりも、はるかに瀬戸市にとってメリットがあるのではないでしょうか。

 わたしたちは、ことが長くその地に住む地権者の生活と権利に直結する問題ですので、先ず、地権者の意見を聞きました。地権者は、基本的にこの構想に賛成しています。具体的に土地を建設省に売り渡すかどうかはその時になってみないと分かりませんが、趣旨に賛同すれば快く買収に協力していただける方もいるでしょう。また、土地を手放したくない、そこで生活していきたいという方もいるでしょう。そういう方には、都市計画法においてその方の土地を「都市計画区域」からはずして計画決定をすれば良いのです。あとの細かな具体的問題は、地権者との話し合いです。決して地権者の土地を、土地収用法を適用して収用する必要はありませんし、してはならないことです。

 他の多くの国営公園では、建設省の管理事務所と建設省の外郭団体である「財団法人公園緑地管理財団」に管理運営が委託されています。具体的には、それぞれの国営公園の「○○公園管理センター」が管理運営に当たります。都市公園法による許認可、基本的な調査、施設の大規模な維持補修工事については管理事務所が行い、植物、動物、建物や工作物等の施設、清掃などの維持管理、並びに利用者の指導、施設利用運営、催し物、広報などの運営管理は管理センターが行っています。わたしたちが視察した埼玉県の国営武蔵丘陵森林公園は、50名ほどの職員によって構成される管理センターが、公園の清掃、森林の伐採、草刈り、イベントの計画、保安対策などを計画的に実施しています。海上の森が国営公園となれば、建設省中部地方建設局の瀬戸海上の森里山公園管理事務所と国営瀬戸海上の森里山公園管理センターという組織がその管理運営に当たることになります

 

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